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使い魔のお仕事レベルがどれか一つ10まで上がると、使い魔は幼体から成体へと進化します。 このとき、10まで上がったレベルによって、使い魔の進化は分岐します。 冒険者レベルが10まで上がった場合は、より戦闘に向いている形態へと進化します。 力や魔力が上がったり、大きな体へと変化したりします。 メイド(執事)レベルが10まで上がった場合は、より家事に向いている形態へと進化します。 細かい作業をするために、獣型の使い魔でも多くは人型へと進化するのが特徴です。 アイドルレベルが10まで上がった場合は、より可愛らしい姿へと進化します。 より複雑な芸ができるようになったり、こちらの言葉をわかってくれるようになったりします。
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不死鳥の使い魔/Minion of Phoenix 不死鳥の使い魔 (1)(R) クリーチャー ― フェニックス・式 速攻 不死鳥の使い魔は人間でないクリーチャーによってブロックされず、 人間でないクリーチャーのブロックに参加できない。 1/1 コモン 永夜抄の各色に存在する、使い魔サイクルの赤版。 サイクル共通で、人間にしかブロックされず、人間しかブロックできないという特性を持つ。 速攻持ちだがパワーが少々物足りない。 参考 使い魔サイクル : 人間の使い魔 兎の使い魔 亡霊の使い魔 不死鳥の使い魔 蟲の使い魔 カードセット一覧/東方永夜抄 クリーチャー コモン フェニックス 式 東方永夜抄 赤 2マナ
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ゼロの使い魔 「なあデルフ」 「なんだ?」 「小さい頃の話していいか?」 「いいぜ」 「駅でさ、お婆さんが不良に絡まれてた。籠がぶつかったのなんだのって。 でも俺ガキだったから、助けるなんてできなくて見てただけだった。俺が強かったら、なんて思ったよ。 でも同時に、ほっとしたな。強かったら、助けにいかなきゃならねえもんなあ。強くったって、勝てるとはかぎらねえもんなあ」 「そうだねえ」 「そう。俺、強くなっちまった。力を手に入れちまった。もう言い訳できない。 あのときは力がなかったから、間に入れなくても言い訳できた。俺は弱いんだからしょうがないって。 でももう、言い訳できない。俺は今、 "強い" から。なにせあれだ。伝説のガンダールヴだからよ」 「うん」 「でもなあ……、強さったって外面だけだ。中身は俺、全然強くねえよな。なんも変わってねえ。 しょうがねえよな、ガンダールヴとか伝説の使い魔とか、いきなりだもんよ。覚悟とかできねえもんよ。 だからこういうの、柄じゃねえんだよ。みんなの盾になるとかよ、ほんとはすっごくイヤなんだよ。 怖くて震えるよ。死にたくねえよちくしょう」 「相棒はてんで義理がてえや」 「それが性分だからな。損すぎる」 「なあデルフ」 「なんだね?」 「俺、死ぬのか?」 「たぶん。まあなんだ、どうせならかっこつけな」 「なんで」 「もったいねえだろ」 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ゼロの使い魔 「やいてないもんやいてないもんやいてないもん」 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ゼロの使い魔 「さよなら、私の世界で一番大切な人」 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ゼロの使い魔 「一年に二回。あんたとこれから、ずっといっしょにいたとして、三十年。いや、四十年かな? 五十年だったらいいわね……。そのときに見せるであろう、わたしの笑顔の回数」 「わたしね、もう、一生笑わない」 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ゼロの使い魔 わたしね、もう一生笑わない。一生誰も愛さない * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ゼロの使い魔 13 さようなら。わたしの世界で一番大事な人 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ゼロの使い魔 13 一年に二回。あんたとこれから、ずっといっしょにいたとして、三十年。いや、四十年かな? 五十年だったらいいわね……。そのときに見せるであろう、わたしの笑顔の回数 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ゼロの使い魔 13
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モット伯は杖を振りながら、水の鞭を避け続けるギアッチョに嘲笑を 投げかける。 「クックック・・・貴様は全く平民の象徴のような男よ そうやって何も出来ずに逃げ続けることしか出来ない平民のな」 優越感に酔う彼は気づかない。見下すことに慣れすぎた瞳には、 常人ならざるギアッチョの動きに違和感を見出すことさえ出来なかった。 「貴様ら弱者は実に面白い 強者と対峙した時、貴様らは逃げる ことしか出来ないということをいつも証明してくれる 謝罪、懇願、 逃避・・・それが貴様ら弱者のお定まりのパターンだ その絶望が 実に面白い!ぬははははははははッ!」 「ほー、そいつぁ確かに面白ぇな ところで弱者ってなぁ誰の ことを指してんだ?」 右上から飛来して来た水鞭を受け止めるかのように、ギアッチョは スッと片手を差し出した。 「バカが!!」 ギアッチョが混乱したものと考えたらしいモット伯が暗い笑みを 浮かべると同時に、水の蛇はギアッチョの掌に命中し―― パキン。 頭から尻尾まで、全てが完全に、そして一瞬で凍りついた。 「・・・・・・へぇ・・・?」 状況を理解出来ず、モット伯は間抜けな声を上げる。次の瞬間、 重力に忠実に従った氷の蛇は地面に叩きつけられて粉砕した。 「・・・な、何が起きて・・・」 呆然と呟きながら、モット伯はじりじりと後ずさる。それに 合わせて、ギアッチョはずいと前に進み出た。彼の振り撒く 縮み上がらんばかりの殺気に、モット伯はようやく気がつく。 「おいおい、伯爵様よォォ~~~~~ 徒手空拳の平民如きに 何をそんなに怯えてんだァァ?」 ギアッチョの嘲りに、モット伯のプライドはかろうじて再燃した。 「だ、黙れ黙れ黙れッ!!平民風情が、もういい!今すぐ死ね!!」 再び血が上った頭を振って、短くルーンを唱える。掬い上げるように 振った杖に合わせて、砕けた氷の破片がギアッチョ目掛けて散弾の 如く襲い掛かったが、 「無駄だ その程度の低い脳味噌でしっかり理解しな・・・」 見えない何かに阻まれて――それらは虚しく四散した。そのまま モット伯の目の前に上体を突き出して、ギアッチョはゆっくりと 宣告する。 「てめーは、弱者だ」 恐怖と怒りと屈辱で、モット伯の顔は真っ赤に震えた。ぎりぎりと 握り締めた杖を力一杯振りかぶる。 「ラ、ラグーズ・ウォータルぶっげぁあぁ!!」 ギアッチョの拳を至近距離から顔面に叩き込まれ、モット伯は 壁際まで吹っ飛んだ。 「げほッ・・・き、貴様!!貴族の私を殴ったな!!死刑だ、 しし、死刑にしてやるぞッ!!」 尻餅をついたまま鼻血を片手で抑えて叫ぶモット伯に、ギアッチョは 侮蔑の眼を向ける。 「ああ?てめー・・・貴族だから殴られないと思ってたわけか? 人を殺そうとしておいてよォォォ~~~ てめーは殴られる 『覚悟』すら出来てなかったっつーわけか?」 「黙れ黙れ黙れッ!!家畜がほざくな!私は貴族だ、伯爵だぞ!! 薄汚い平民如きがぐぶぉおッ!!」 言葉の途中で顎を容赦無く蹴り上げられ、モット伯はアーチのように 仰け反った。その前に屈み込んで、ギアッチョは世間話のような調子で言う。 「よぉ、知ってるか?その身を賭して領民を守るのが貴族ってやつ らしいぜ つーことは、だ・・・てめーは貴族なんかじゃあねーって ことになるなァァァ」 「は・・・はガッ・・・ よ、寄るな虫ケラが・・・私は貴族だ・・・ 伯爵なんだ・・・」 「いーや違うね てめーは貴族でも平民でもねぇ・・・ただのゴミ屑だ」 「・・・な、何だと・・・ 平民のぶ、分際でこの私にうごぉォッ!!」 モット伯の顔面を裏拳で横殴りにブッ叩き、そのまま眼鏡の位置を直す。 「さっきから平民平民とうるせーがよォォォーーーー てめーは一体 何をして自分を貴族だと思ってやがるんだ?ええ?おい」 「そ、」 開きかけた口を、ギアッチョは掌底で強引に閉じさせる。 「当ててやろーか?てめーにゃあ誇りも信念も、倫理も道徳もねえ あるのは運良く持って生まれた魔法と財産だけだ 違うか、オイ? 魔法が使えるから貴族で、財産があるから貴族・・・てめーの頭ン中に あるのは、たったそれだけだ」 「そこで」と継いで、ギアッチョは左手を持ち上げる。まるで飲みかけの ペットボトルに手を伸ばすような気安さでモット伯の杖を掴むと、 「・・・な、あ、ああぁああ・・・!!」 硬質的な音を立ててそれはあっと言う間に氷の柱へと姿を変え。 バキンッ!! ギアッチョの手によって、容易くヘシ折られた。 「・・・さて、これでてめーの拠り所は消えちまったわけだ おい、杖が無くなりゃあどうするんだ?お偉い伯爵様よォォォーー」 狩をする獣のような眼光で、ギアッチョはモット伯を見下ろした。 衛兵から隠れながら、迷路のような邸内をシエスタ達はおぼろげな 記憶と勘を頼りに出口へと走る。 「え、ええっと・・・多分こっちです!」 「あれ?確かこっちだったような気がするんだが」 「違う、こっち」 「ってどっちなのよ!」 ひょっとしなくても、彼女達は迷子だった。シエスタを除く三人は 先程の往路しか知らないし、シエスタとて似たようなものなのである。 埒があかなくなったタバサは、こんな時まで読んでいた本を閉じ、 動きを止めて目蓋を落とした。 「タバサ・・・?」 「・・・風はこっちから」 呟くように言って、タバサはまた走り出した。風のメイジの言葉を 信じない理由はない――シエスタとギーシュはすぐに後を追って 駆け出す。その後ろを、ルイズが少し息を荒げながら着いて行く。 その原因は、胸に抱えるデルフリンガー。「素手のほうが都合がいい」 ということで、ギアッチョに預けられたのだった。持ち運ぶだけならば 問題はないが、抱えて走るには彼女の細腕には重すぎる。だがルイズは 文句を言おうとは思わなかった。ギアッチョが自分に何かを頼んで くれたことが、彼女は純粋に嬉しかった。 「わりーなルイズ 姿形は変えられても重さばかりはどうしようもねぇ」 「そんなのあんたが気にすることじゃないわよ 衛兵連中にメイジが 混じってたら働いてもらうんだしね」 「ま、そいつぁ任しとけ 旦那のお陰でこんな時ぐれーしか出番が ねーからよ」 一人と一本は小声で笑い合う。デルフの軽口が、ルイズの緊張を 和らげていた。 「しっかし、さっきは随分と大胆だったじゃねーの お前さんも やるときゃやるもんだね」 楽しそうに言うデルフと対照的に、ルイズはきょとんとした顔をする。 「大胆?」 「大胆も大胆、『あなたがいれば他には何もいらないわ!』なんて 中々言えるセリフじゃねーよ ありゃ一種の告白だね」 わざとらしく声を真似するデルフに、一瞬置いてルイズの顔はぼふんと 茹で上がった。 「だっ、な・・・ちち、違っ・・・!ああああれはそんな意味なんかじゃ ないわよ!ていうかそ、そこまで言ってないでしょ!!」 「いーや言ったね、言ったも同然だね 俺にはひしひしと伝わったぜ 何てーの、ありゃ愛だね愛 溢れんばかりの恋情が、」 「な、なななな何恥ずかしいこと言ってんのよバカっ!!違うって 言ってるでしょ!?あ、あいつのことなんて全然全く一切これっぽっちも 気になってなんかないんだからっ!!」 「解ってる解ってる もう気になるなんて段階じゃないんだよな しかしあのセリフじゃまだまだ弱いな 旦那はああ見えてかなりの 朴念仁だからな、もっとこう好きだの愛してるだのはっきりした言葉を 交えつつ――」 「・・・ち、ちち違うって言ってるでしょこのバカ剣ーーーーっ!!」 滔々と語るデルフリンガーを遮って無理矢理鞘に戻し、ルイズは肩で はぁはぁと息をする。 もしかしたら、いや、認めたくはないが多分きっと、自分は恋をして いる――それはデルフに言われなくとも、自分で理解していることだ。 しかしそんな恥ずかしいことを他人に知られることだけは出来ない。 ていうか無理。絶対無理。これが誰かに知れるぐらいなら、いっそ死んで しまったほうがいくらかマシかもしれない。 そういうわけで、一つ溜息をついて上げた顔の先で三つの視線が自分を 凝視していると気付いた時――彼女は心の底から泣きたくなった。 慌てて姿勢を正して、シエスタはコホンと咳をする。 「え、えーと・・・ミス・ヴァリエール、その・・・ど、どうか なさいましたか?そんな所で立ち止まられて・・・」 ぎこちない笑顔で問い掛けるシエスタに、ルイズは真っ赤に上気した 顔を少し和らげた。 ――・・・あ、あれ もしかして聞こえてない・・・? 「そ、そうよね 結構距離が開いてたものね」と心の中で呟きながら、 恐る恐るタバサを見る。 「・・・・・・急いで」 そう言いながら、タバサはルイズに背を向けた。 ――や、やっぱり・・・聞こえてないかも ルイズはほっと胸を撫で下ろす。どうかそうであって欲しいと願う 彼女の眼には、タバサのほんの少し染まった頬は見えなかった。 「なんとかなった」と、三人は一様に独白する。しかしそんな彼女達の 苦心を見事にブチ壊す男が一人。 「安心したまえルイズ、最初は皆そういうものなのさ ある日突然、 雷に打たれるように、或いはふっと花の香りが届くように己の恋の つぼみの存在に気付く、それが恋心というものなのだよ そう、 僕とあの可憐なモンモランシーも(中略)、だから今は解らなくても いいのさ いつか君もハッと気付く時が来る、そしてその時こそが 二人の恋の――」 造花の薔薇を取り出してデルフリンガーの何倍もアレなことを のたまうギーシュに、場の空気は一瞬で凍りついた。 「・・・あ、あのー・・・ミスタ・グラモン、少し空気を・・・」 「そう!空気のようにいて当たり前だと思っていた人間が、ある日 突然特別に感じられる、それが恋の萌芽なのさ!かく言う僕と モンモランシーも(後略)」 水を得た魚のように得々と語り続けるギーシュにシエスタはこの世の 終わりのような顔をし、タバサはそそくさと読書に逃避した。 「・・・ち・・・ち・・・・・・」 真っ赤な顔で肩を震わせるルイズの様々な感情は、今静かに限界を 突破した。 「父?」 「違うって言ってるでしょうがぁあぁああーーーーーっ!!!」 直下型の地震のように爆発したルイズの叫びは、広大な館中に轟いた。 ――そう、「館中」に。 「こっちから声が聞こえたぞ!」 「いたぞ!あそこだ!」 「「あ。」」 …そんなわけで、彼女達は一瞬にして大ピンチに陥った。何せ 屋敷中の衛兵達に前から後ろから一目散に取り囲まれたのである。 その数は十や二十では利かなかった。一方、ギーシュが自分達の 周囲に配置したワルキューレはたったの三体。タバサの魔法も、 衛兵全てを薙ぎ倒す程の力は出せない。満身創痍な彼らの、それが 今の限界だった。 「・・・ご、ごめんなさい・・・」 ルイズは悪戯が見つかった子供のような顔で謝るが、それは色々な 意味で遅すぎた。 「見つかってしまったものはしょうがないさ それよりも何とか 切り抜ける方法を考えようじゃないか」 この事態を引き起こした一因であるところの少年は、いっそ清々しい 程爽やかに言い放った。しかしこの場の誰にも、それに突っ込む気力は 残ってはいなかった。おまけに、言っていること自体は全く正しい ものである。衛兵達のど真ん中に投げ込んでやりたい気持ちを抑えて、 タバサは簡潔に方策を告げた。 「強行突破」 一見強引に見えるが、なるほどそれは確かに最善の方法かも知れない。 全員をいちいち相手にしていればジリ貧になるだけである。ならば 思い切って後方を放置し、前方を突っ切るのが最も負担の少ない作戦だと 思われた。 ――・・・でも 懸念はある。自身の無骨な杖に、衛兵達はさほどの怯えを示していない。 それはつまり、彼らはメイジに対して何ほどかの場数を踏んでいる―― 或いはそれに抗する策が存在している可能性があるということである。 「・・・彼らの中に、メイジが混じっている可能性がある」 「――まかせて」 デルフリンガーを抱える腕に少し力を込めて、ルイズはしっかりと 答える。それを合図に、彼女達は一斉に走り出した。 ルイズ達の意図を理解して、前方の衛兵達は刃を潰した槍を構える。 その後ろから、不可視の風の弾丸が空を切って飛来した。 「ルイズ!」とタバサが素早く叫ぶ。 「デルフ、お願い!」 「あいよ!」 すらりと魔剣を引き抜いて、ルイズは前方を薙ぎ払うように掲げた。 その瞬間、風は荒々しく逆巻きながらその刀身に飲み込まれた。 「っつ、重っ・・・こんなのよく片手で持てるわねギアッチョは ごめんシエスタ、鞘持ってくれる?」 「は、はい ミス・ヴァリエール」 ふらりとよろけるルイズから、シエスタは慌てて鞘を預かる。ルイズは 両手で柄を握り直すと、再び虚空に突き出した。ギュルギュルと 渦巻きながら、ウィンド・ブレイクは二発三発とデルフリンガーに 飲み込まれる。ダメージ一つないルイズ達に、余裕を保っていた 衛兵達はにわかにざわつき始めた。その隙を突いてタバサが撃ち放った ウィンド・ブレイクが衛兵達を弾き飛ばすが――如何せんその数が多く、 海を割るように道を開くことは出来なかった。 不味い、とタバサは独白する。自分の放てるウィンド・ブレイクは あと数発もない。これでは埒を明けることは相当に難しいだろう。 「・・・タバサ、大丈夫なのかい」 それを悟ったか、ギーシュが不安げな顔で問い掛ける。彼のゴーレムは 後方のガードに手一杯で、とても前面の攻撃に向ける余裕はなかった。 「・・・・・・」 タバサは答えない。その沈黙が、言葉よりも雄弁に現状を語っていた。 「・・・よ、よし!ならばここは、ぼ、ぼぼ僕が囮になろうじゃないか!」 ギーシュの頭はあっさり玉砕一色に染まってしまったらしい。杖を ぶるぶると握りしめて、彼は高らかに叫んだ。 「お、おおお前達!こっちを見ろ、この僕が相手になってやる! 我が名は青銅のはォッ!!」 タバサの杖を脇腹に、ルイズの蹴りを脛に受けて、ギーシュは奇声を 上げてうずくまった。 「素性明かしてどうすんのよ!」 「バカ」 タバサの一撃が予想以上に効いたらしく、ギーシュは二人の罵倒に 返答も出来ず呻いた。 「・・・でもどうするの?このままじゃ・・・」 ルイズはタバサに肩を寄せて呟く。その先を語るかのように、衛兵達は じりじりと間合いを狭めて来た。タバサが僅か黙考して開いた口を 遮って、シエスタは悲痛な声を上げる。 「も、もうやめて下さいっ!」 三色三対の視線を受けて、彼女は絞り出すように続けた。 「もういいんです、私が出て行けばきっとここは収められます・・・ お三方の気持ちは本当に嬉しいです、だけどこれ以上は」 「嫌よ」 「えっ・・・」 「こんな所で逃げ出したら、ギアッチョに・・・リゾット達に 笑われるわ」 きっぱりと言い放って、ルイズは真っ直ぐにシエスタを見つめる。 その眼差しに決闘の時のギアッチョと同じ光を見て、シエスタは それ以上を続けることが出来なくなってしまった。 「・・・どうして、こんな・・・ただの平民の為に、ここまで するんですか」 俯くシエスタに、ルイズは少しためらいがちに答える。 「・・・ギアッチョの友達は、わ・・・わたしの友達だもの そ、そうでしょ、ギーシュ」 照れ隠しに眼を逸らして言うルイズに、ギーシュは屈みこんで 腹を押さえた体勢のまま応じた。 「ぐふっ・・・そ、その通りさ 友の窮地を、誰が見捨てるものか」 「・・・友、達・・・?」 シエスタは呆けたように繰り返す。貴族であるルイズ達の言葉に、 彼女は耳を疑った。 「・・・で、でも 私は平民で・・・」 「関係無い」 小さく首を振るタバサの横で、ギーシュはよろよろと立ち上がる。 「タバサの言う通りだよ ギアッチョと付き合うようになって、 僕はやっと理解した・・・貴族と平民の間に、違いなんて何も ないんだ 魔法が使えるか使えないか、ただそれだけのこと …皆人間なんだ、ただ生きてる人間なんだよ」 「ミスタ・グラモン・・・わ、私は・・・」 「武器を捨てろ!!」 野太い声が、シエスタの言葉を遮った。衛兵達のリーダーと思しき メイジの男が、ルイズ達に杖を突きつけて怒鳴る。 「何者か知らぬがここまでだ 何やら怪しげな術を使うようだが、 まさかこの人数相手に逃げられると思わぬことだな」 ルイズ達は、無論武器を捨てたりはしなかった。背中合わせに 身を寄せて、彼女達は無言で杖を構え続ける。 「抵抗を続けるか ならば少々痛い目に遭ってもらうぞ」 男の言葉と共に、衛兵達は一斉に襲い掛かった。 「ひかえおろう!」 この場にそぐわぬ時代がかった物言いに、衛兵達は思わず動きを 止める。ルイズ達までもが眼を点にして声の主を見つめた。 彼女――タバサは、長大な杖を掲げて口を開く。 「我らを何と心得る 東方の魔人、無窮にして絶対なる者、 偉大なるお方の配下である」 「は、はぁ・・・?」 衛兵達は腑抜けた声を上げる。 「我らが主はあらゆる物を凍てつかせる先住魔法の使い手である その絶大なるお力は、荒海を一瞬にして氷海へと変えるものなり その脚は一息に百メイルを駆け、その腕は鋼をも引き裂かん」 芝居がかった調子で、タバサは嘘八百を並べ立てる。常ならば一笑に 付されて然るべき大法螺だが、黒装束の奇異な出で立ちとデルフに よる魔法吸収が功を奏したか、衛兵達は神妙な表情を浮かべている。 そんな彼らを眺めて、タバサは再び口を開いた。 「我らが主は、不逞かつ悪逆なるジュール・ド・モットを許しはせぬ 彼の者は今、主の手によって然るべき報いを受けているであろう」 衛兵達は僅かにざわつき始める。メイジの男は彼らの間に生まれ始めた 恐怖を切り裂くように杖を振った。 「バカバカしい、下らぬ言い逃れはやめよ!そのような嘘が 通用するとでも――」 「ぬわーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」 絶妙なタイミングで悲鳴が響く。その声は紛れも無くモット伯の ものであった。冗談とは思えない叫びに、衛兵達の間からはついに 「ひぃっ」という声が上がる。 「え、衛兵共!何をしている、はやく助けぶごぁあぁぁ!! がふッ、お、おい貴様らどこへ――ひぃいいぃい!!」 予想だにしなかったモット伯の悲鳴が、衛兵達の心に明確な恐怖を 植えつける。いつしかリーダーらしきメイジまでもが、じりじりと 後退を始めていた。 「我らが主は、頭を垂れる者には寛大である しかし牙を剥く者には 容赦せぬ その者の心臓を凍てつかせ、五臓六腑を割り砕くであろう」 杖を大げさに振り回して、タバサは好き放題に恫喝する。そうかと 思えば、彼女は急に杖の矛先を変えてデルフリンガーを指し示す。 「見よ、あれこそがあのお方の魔剣、エターナルフォースデルフリンガー である ひとたび振れば魔法を喰らい、大地を穿ち、雷雲を呼ぶ悪魔の剣 ならん 相手は死ぬ」 勝手に付加された設定への突っ込みを、デルフは何とか堪える。素早く 目配せするタバサに気付き、ルイズは大げさに彼を構えてみせた。 それを確認して、タバサは周囲を見渡す。わずか三メイル程の近くに 迫っていた衛兵達は、今や十メイルを遠ざかっていた。 「このまま逃げるならばよし しかし我らと剣を交えるならば――」 タバサの声に合わせて、ルイズはずいと足を踏み出した。 「アトミックファイヤーブレードを使わざるを得ない」 言葉の意味はよく分からんがとにかく凄い自信を持って放たれたその 言葉に、衛兵達はもはや隠すことも忘れてガタガタ震え出す。 「精神集中、一刀入魂、仇敵殲滅・・・」 トドメとばかりにぶつぶつ呟かれた呪詛に、 「うわぁああああぁあああああああああああ!!」 衛兵達は蜘蛛の子を散らす如く我先に逃げ出した。 「ちょっ、貴様ら!止まれ!止ま、あわーーーーーーーっ!!」 人の濁流が喚くリーダーを突き飛ばし、踏み倒し、ついには彼諸共 流れ去って、怒号と殺気がひしめいていた廊下はあっと言う間に静寂を 取り戻した。こくりと一つ頷いて、タバサは眼鏡の位置を直す。 「今宵の地獄はここまでとしよう」 「何なの?それどういうキャラなの!?なあ!」 一方、こちらはモット伯の寝室。 「おい~~~~~~~~~~・・・もう終わりか?ええ?杖一本 折られた程度でよォォォ」 ギアッチョはつまらなそうに、ボロ雑巾のように倒れ臥すモット伯を 見下ろしていた。 「・・・た、助けてくれ・・・」 「ああ?」 「い、いくら欲しいんだ・・・好きなだけくれてやる だ、だから 助けてくれ――ガブッ!!」 顔面をモロに踏みつけられて、モット伯はくぐもった悲鳴を吐く。 「言葉遣いがなっちゃあいねーな 助けて下さいだろうが ええ?」 「・・・・・・た・・・助けて・・・下さい」 プライドも捨てて哀願する彼を冷たい双眸で眺めて、ギアッチョは 口の端を歪めた。 「助けるわけねーだろーが」 「そんな・・・!!」 絶望に震える伯爵をもう一度壁に蹴り込んで笑う。 「てめー、さっき弱者は逃げることしか出来ねーと言ったが・・・ ちょっと違うんじゃあねーか」 「・・・う・・・」 「真の弱者はよォォ~~~~・・・逃げることすら出来ねえ」 ギアッチョの言葉通り、モット伯には逃げる気力も残っては いなかった。うわ言のように、ただ命乞いを繰り返している。 「・・・フン」 鼻を鳴らして「下らねえ」と呟くと、ギアッチョはスッと右手を 差し伸べた。 「オイ 掴まりな」 よろよろと出されたモット伯の手を掴んで、彼を立ち上がらせる。 「た・・・助けてくれるのか・・・?あ、ありが・・・ハッ!?」 ギアッチョの握り込まれた左手に気付いて、モット伯は悲鳴に近い 声を上げる。 「ま、待て!やめてくれ!!ここは二階――」 バッギャアアァアアァアアッ!! 「うげあぁあああぁああぁッ!!」 ガラスの砕ける音が派手に響き、モット伯は中庭の噴水へ悲鳴と共に 落ちて行った。壊れた窓の奥から見下ろして、ギアッチョは心底 楽しそうにクククと喉を鳴らす。 「やりすぎよギアッチョ ・・・ま、提案したのは私だけど」 呆れた声を出すキュルケに、肩越しに眼を遣って尚笑う。 「まだ終わりじゃあねーだろ おめーの出番を忘れんなよ」 「そこは大丈夫よ ほら、行きましょう」 キュルケの声に押されて、ギアッチョは中庭へ飛び降りた。彼に レビテーションをかけると、その後を追ってキュルケは同じく魔法を 使って舞い降りる。 「・・・う、あ・・・」 噴水に半身を沈めながら、モット伯はかろうじて意識を保っていた。 しかしその身体は動かない。叩き付けられた衝撃よりも、殺されることの 恐怖が心身を麻痺させていた。 ばしゃりと水が跳ねる音が聞こえ、反射的に閉じていた眼を開く。 あの忌まわしい男が、ゆっくりとこちらに歩いて来る。 「・・・あ・・・・・・!」 声にならない声が漏れる。必死に逃げようとするが、死が眼前に迫る にも係わらず身体は言うことを聞こうとしなかった。逃走の意思を 察してか、ギアッチョは水面にスッと片手をつける。その瞬間、 噴水中の水がビキビキと音を立てて凍りついた。 「ひっ・・・ひ・・・・・・!」 身体をガッチリと氷に捕えられて、モット伯は恐怖にただ震えた。 一体何なんだ、この化け物は。 己に恨みのある人間などいくらでもいるだろう。そんなことなど 誰に言われずとも理解している。だからこそこれだけの警備を雇って いるのだから。 しかし。 一体、この化け物は何なんだ。 こんなことは聞いていない。こんな平民が、こんな化け物が存在する ことなど聞いていない。魔法は絶対なのではなかったのか?我々は 絶対なのではなかったのか?こいつは、こいつは一体―― 「何・・・なんだ・・・!!」 掠れた声が、思わず口をついていた。しかし男は答えない。つま先が 触れ合う程の距離から、氷よりも冷たい瞳で己を見下ろしている。 「そのお方は――」 彼の後ろから声が響いた。今まで事態を傍観していた黒装束の女が、 朗々たる声音で語り始める。 「遥か東方、ロバ・アル・カリイエの魔人 能う者無き無限の魔力を 持ち、深遠なるお心で過去と未来を見通すお方――私達など足元にも 及ばぬ存在よ」 「・・・・・・!」 モット伯は絶句する。そんなバカな、等とは言えようはずもなかった。 呪句も唱えずにただ触れただけで飛び交う水や噴水までも一瞬で 凍結させる、そんな凄まじい力を眼の前で見せられたのだ。一体 どんなメイジならそんなことが出来るというのか――いや、例え 始祖であろうと出来はすまい。 「・・・嫌だ・・・」 氷に絡められた身体で必死にもがこうとするが、その指の一本すら 動かすことは叶わなかった。 「だっ・・・誰か・・・!!」 恥も外聞もなく助けを乞うモット伯を眺めて、黒いローブの女は 形のいい唇を笑みの形に歪めた。 「・・・ねえ あなた助かりたい?」 「は、はい!はいィィッ!!」 モット伯は一も二も無く返事をする。少し考え込むような素振りの 後で、黒衣の女は静かに口を開いた。 「そうねぇ・・・今から言うことに従うなら、助けてあげなくもないわ」 モット伯は首をブンブンと取れそうな勢いで振って肯定の意を示す。 女の口元に浮かぶ笑みが、一段大きくなった。 「いい心がけね・・・それじゃまず一つ」 「ひ、一つ!?」 「ご不満かしら?」 「いっ、いえ滅相もない!」 「よろしい まずはあなたが強引に買い取った女の子達を全員解放して もらおうかしら」 全員、という言葉にモット伯は凍ったように固まった。「ぜ、ぜんいん …?」弱く呟くが、女は許しはしない。 「出来ないのなら――」 「し、しますッ!解放します喜んでぇぇ!!」 「ならいいわ さて、それじゃ次だけど・・・あなたの所持している 禁制品、あれを全て始末なさい」 「そんなッ!?」 青ざめた顔をするが、女はやはり許さなかった。 「そう、一つ残らず 一応言っておくけれど、このお方に隠し事なんて 通じはしないわよ」 「一つ・・・残らず・・・?」 この世の絶望を集約したような顔のモット伯を、それでも女は許さない。 「あら、この期に及んでまだ私達を騙すつもりだったのかしら?」 「と、とんでもございませんッ!!」 「結構 さて、それじゃあ三つ目だけど」 「ひィッ!?」 男の片手が、モット伯の首を無造作に掴んだ。 「オレ達のことをよォォォ~~~~~~・・・誰かに言ってみろ」 「か、あ・・・!!」 ビキビキと音を立ててモット伯の首が凍り出す。獣のような双眸で己の 顔を覗き込む悪魔に、モット伯はこれまでで最高の戦慄を感じた。 「――殺すぜ」 男の手は、言い終えて尚離れない。このまま首を砕かれるのでは ないかという恐怖に、 ――た・・・助けて・・・神様、ブリミル様・・・! モット伯は生まれて初めて本気で神に祈った。 無限に思える数秒を経て、男はようやくその手を離した。瞬間、 モット伯の首はまるで何事もなかったかのように元に戻る。 「・・・あ・・・・・・あ・・・」 肺腑から漏れ出た呼気と共に、彼の全身からへなへなと力が抜けていった。 「さて、それじゃあ最後だけれど」 「は・・・い・・・」 モット伯は力なく答える。もはや怯える余裕すら残ってはいなかった。 「二度と平民の女の子に手を出さないこと 禁制品にも手を出さないこと その他一切の非道を止めること・・・解ったわね」 「・・・わかりました もうにどとなににもてはだしません・・・なにも しません・・・」 魂の抜けた声で繰り返すモット伯を見遣って、黒装束の女は満足げに笑う。 「いいこと?もしこの先同じようなことをした場合――今度はその命を 手放すことになるわよ 永遠にね」 最後にそう言って、女は黒いローブを翻してモット伯に背を向ける。 立ち上がった男がそれに習うと、二人は驚く程あっさりと立ち去った。 男の姿が宵闇に消えると同時に、凍った噴水はばしゃんと音を立てて 一瞬の内に水へと姿を戻した。しかしモット伯はその場を動こうとは しない。情けなく崩れ落ちた格好のまま、冷えた身体を温めることも 忘れて虚脱していた。 「・・・は ははははは・・・」 何分が過ぎただろうか。彫像の如く微動だにしなかったモット伯の 口から、唐突に笑い声が漏れた。 「ははは・・・生きてる・・・生きてるぞ・・・」 身体にかかる水を跳ね除けて、モット伯は勢いよく立ち上がる。 満天の星空に両の拳を突き出して、心の底から笑った。 「生きてる・・・俺は生きてる!うはははは、生きてるぞッ!! ははははははははッ!!」 ――後年、彼は聖人の一人に列されることになる。この日を天啓に 神職の門を叩いた彼は、私財を投げ打ってその生涯を窮する平民達の 為に捧げ、「慈雨のモット」と呼ばれるに至った。他人の非を咎める 時、彼は決まってこう言った。「神は全てを見ておられる 我らが 悪を為した時、神は人を遣ってその罪を罰されます」と。 モット伯に買われた女性達の解放はつつがなく完了した。彼女達を 全員解放させた理由は勿論善意によるものだったが、ギアッチョには もう一つ、目的がシエスタ一人だったと悟らせないことで身元の判明を 防ぐという狙いもあった。従ってギアッチョは彼女達に感謝される 理由など自分にはないと思っていたのだが、それでも何度も頭を下げる 彼女達にどうにも居心地が悪くなり、一番歳若い少女に乗って来た馬を 寄越して早々にシルフィードの背中へ乗り込んだ。当然馬は学院の 備品なのだが、あんな任務をこなした後なのだからオスマンもその くらい大目に見てくれるだろうと彼は適当に考える。 「・・・えっと、本当に私が乗ってもいいんでしょうか」 ギアッチョに続いてシルフィードの元へとやって来たシエスタが、 遠慮がちに問い掛けた。 「オレに聞かれてもな ま、そう大した距離でもねー 多少定員 オーバーでも頑張ってくれるだろうぜ」 言いながら、ギアッチョはシルフィードの背中をばしんと叩く。 「きゅい!」 「ほらな」 「言葉が分かるんですか?」 「そういうことにしとけ」 適当に答えるギアッチョに少し相好を崩して、シエスタはおずおずと 背中へ乗り込んだ。 「じゃあ・・・お、お邪魔します・・・」 応じるように、シルフィードはもう一つ鳴いた。 「・・・あの、本当にありがとうございました」 全員を乗せて夜空へ舞い上がったシルフィードの上で、シエスタは 土下座せんばかりに頭を下げる。 「もう何度も聞いたわよ」 苦笑交じりに返すキュルケに首を振って、彼女は尚も頭を下げた。 「どれだけ言っても言い尽くせません 本当に・・・本当に感謝 してるんです 家名まで賭けて助けに来ていただけたなんて・・・ ギアッチョさんも、そんな満身創痍で・・・私、一体どうやって お返しすればいいのか――」 「この程度は怪我の内に入らねーぜ 一宿一飯の義理っつーやつだ」 何でも無いという風に手を振るギアッチョに続いて、薔薇の杖を 取り出しながら口を開いたギーシュをルイズの言葉が遮る。 「見返りが欲しくてやったんじゃないわよ わたし達はあんたを 助けたかっただけ それが叶ったんだから、他に何かを求める必要 なんてどこにもないわ」 「で、ですが・・・」 シエスタはしかし食い下がる。彼女にとっては、ルイズ達は己の人生を 救ってくれた救世主なのである。何千何万頭を下げても足りるものでは なかった。 「そうねぇ」 思案顔でシエスタを眺めていたキュルケが、思い立ったように口を開いた。 「それじゃ、今度厨房でご馳走でもいただこうかしらね?」 「・・・はしばみ草」 「それはやめろ」 タバサの小さな呟きを、ギアッチョは速攻で否定する。 「あ・・・」 キュルケ達の暖かな気遣いを感じて――シエスタはようやく、いつもの 笑顔を見せた。 「・・・はい」 遥か後方に小さく見えるモット伯の屋敷を眺めて、ルイズは呟くように 口を開いた。 「・・・ねえギアッチョ」 「ああ?」 「わたし、知らなかった」 ギアッチョは静かに隣に眼を向ける。少女は桃色の髪をなびくに任せて、 はにかんだ笑みを浮かべた。 「誰かを助けることって――こんなにも気持ちのいいことなんだって」 人はそれを、偽善であると言うかも知れない。しかし一体それが何だと いうのだろう。ギアッチョは、リゾット達は、そしてルイズ達も―― 彼らはいつだって、信じたことを貫き通しているだけなのだから。 「・・・」 ルイズに答えずに、ギアッチョは彼女の視線の向こうへと眼を移す。 彼方に薄く延びる山々の稜線から、朝を告げる光が射し込み始めた。 全てを赦す曙光を眺めて、眼鏡の奥の双眸を細める。 「――眩しいな」 そう言いながらも、ギアッチョは眼を逸らさずに呟いた。 「だが、ま・・・ 悪くねー気分だ」 程なくして一行は学院へと帰還した。シエスタをルイズ達に送らせて、 ギアッチョは一足早く部屋へと向かっている。彼女達の前で言いは しなかったが、ギアッチョの疲労はもはや限界に近かった。 極力疲弊を隠す足取りで女子寮を歩く。包帯を巻いた身体でガンを 飛ばしながら早朝の女子寮を闊歩する長身の男というのは傍から見れば かなり危ない絵面だが、彼は幸いにして誰の悲鳴も浴びることなく ルイズの部屋まで辿り着けた。倦怠感溢れる動きでドアを開き、 「あでっ!」 デルフリンガーを投げ捨てるように置く。 「・・・あー・・・」 半ばもつれるような足取りで中に入ると、そのまま数歩ふらふらと進む。 「流石に、つれぇ・・・な」 ギアッチョはそのまま、力無く前方に倒れ込んだ。 「あれ?」 遅れること数分、戻ってきたルイズは開きっ放しの扉に首を傾げた。 キュルケと別れて、扉を閉めながら声を掛ける。 「ちょっと、扉ぐらい閉めなさいよ・・・って」 ベッドに倒れ伏すギアッチョに、ルイズは僅か動きを止めた。 「ギ、ギアッチョ!?大丈夫!?」 「あーあー、静かにしてやんな」 駆け寄るルイズを、デルフが静止する。よく見れば別に死んでいる わけではなく、相変わらずの仏頂面で彼はかすかに寝息を立てていた。 「な、なんだ・・・ もう、心配して損したわ」 一つ溜息をつくと、「わたしも寝よう」と呟いてルイズはマントに手を 掛ける。するりと肩から落とした所で、ハッと顔を上げた。そっと 後ろを伺うと、ギアッチョが眼を覚ます様子はどうやらないようだった。 「・・・う~・・・」 ルイズは少し恨めしげにギアッチョを見たが、すぐに背を向けて そそくさと着替えを済ませた。 いざや就寝という段になって、 「・・・あ」 ギアッチョが寝ているのは自分のベッドだと、ルイズはようやく 気がついた。 「ど、どうしよう・・・」 ギアッチョを起こすわけにはいかないが、しかし自分も相当疲れている。 出来ればベッドで横になりたい所だが、ギアッチョの隣に潜り込むと いうのは、 ――・・・その ま、まだはやいっていうかなんていうか・・・ ルイズは真っ赤な顔で考える。 考える、考える、考える。 十分以上堂々巡りを繰り返して、ルイズの頭はそろそろ湯気が出そうに 茹り始めた。熱と眠気でよく分からなくなって来た意識の中で、ルイズは 自棄になって呟く。 「・・・ああ、もう・・・!」 言うが早いか、ギアッチョの隣にぼすんと飛び込んだ。 「わ、わたしのベッドだもん・・・!」 ぼそぼそと呟いて、枕に顔をうずめる。すぐに昼夜を徹した疲労が 襲い掛かり、ルイズはそのまま――まどろみの中に落ちていった。 夢と現の境で、ルイズは今日を思い返す。 …ああ。こんな気持ちになったのは初めてだ。 皆といる明日が――とても楽しみだなんて。 ==To Be Continued...
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すっかり慣れた、しかしこの場にそぐわぬどこか甘い香りが鼻腔を くすぐり――ギアッチョの意識はゆっくりと眠りの海から浮かび上がる。 「・・・・・・ああ?」 開ききらない瞳で仰向けのまま左右を探ったギアッチョの、それが 最初の言葉だった。 第三章 その先にあるもの ゆるゆると上体を起こして、ギアッチョはいささかぼんやりした 視線を下に向ける。視界に入ったものは、見間違えようも無くルイズの ベッドだった。そしてその持ち主は―― 「・・・・・・」 ギアッチョの隣で、すやすやと寝息を立てている。 「ここにブッ倒れて・・・そのままっつーわけか」 「我ながら情けねーな」と呟いて、ギアッチョは小さく溜息をついた。 何とか途中で気力が切れずに済んだが、もしもガキ共の前で倒れて いたらと考えると心底自分が腹立たしくなる。 「少々かったりぃが・・・鍛え直すとするか」 立ち上がろうと身体に力を入れるが、上着の裾が何かに引っ張られて ギアッチョは再び腰を下ろす。何事かとそちらを見れば、ルイズの 小さな手が服の端を掴んでいた。引きはがそうと服を引っ張るが、 一体どんな夢を見ているものか、ルイズは頑なに手を離そうとしない。 「・・・おい」 声をかけてみるが、少女が眼を覚ます様子はない。 「・・・クソガキ、起き――」 頭を掴んで揺さぶろうと伸ばした手を、ギアッチョはピタリと止めた。 考えてみれば一日以上寝ていなかったのだ。自分と違って、ルイズは そういうことに慣れてはいないだろう。そう考えると、無理矢理起こして しまうことも少々躊躇われる。 「・・・チッ」 まあいい、特に急ぐ理由もない。相変わらずの凶相で一つ舌打ちして、 ギアッチョは再びベッドに背を預けた。 「・・・ぅん・・・」 浅いまどろみの中で、ルイズは一日ぶりの睡眠を噛み締めていた。枕に 頬をうずめて、毛布を胸に抱き締める。いつもと同じそれが、今日は 何故だかとても幸せに感じられた。そんなわけだったから、 「・・・・・・ギアッチョ・・・」 等とうっかり寝言を洩らしてしまっても、それは仕方のないことで。 「ああ?」 しっかり聞こえていたギアッチョに無愛想に言葉を返されてしまったと しても、やはり仕方のないことだった。 ただ、ルイズ本人はそうは思わなかった。自分の言葉で微かに目覚めた 彼女の心臓は、ギアッチョの声で跳ね上がった。 「ようやくお目覚めか」 「えっ、な、ち・・・ちちち違うの!違うんだからね!!」 「・・・何か知らんが落ち着け」 「・・・う、うん・・・」 答えたところでギアッチョの服を掴んでいることに気付き、ルイズは 慌てて手を離した。ギアッチョはそれを眼だけで眺めると、もう用は 無いと言わんばかりにベッドから降りる。 「厨房行ってくるぜ」 「あっ・・・」 デルフリンガーを担いですたすたと扉に向かうギアッチョに一抹の寂しさを 覚えて、ルイズは身体を起こした状態のままその背中を見つめる。そんな 視線に気付く様子もないギアッチョがドアに手を伸ばした瞬間、 「・・・?」 ドアは外側から開かれた。 「あら、おはようギアッチョ」 ギアッチョが口を開く前に、キュルケは驚いた顔も見せずに挨拶する。 「昨日の今日で元気だなおめーは ルイズに用か?」 「ええ、それと貴方にもね ちょっと待っててちょうだい」 ギアッチョの肩越しに室内を覗き込みながらそう言うと、怪訝な顔の 彼をそのままにキュルケはルイズの前へとやって来た。 「おはようルイズ やっぱりまだ寝てたわね」 「お、おはよう」 「あら、ちょっと顔が赤いんじゃない?風邪でもひいた?」 「べっ、べべべ別にああ赤くなんかないわよ!」 わたわたと手を振って否定すると、ルイズは話を逸らそうと言葉を継ぐ。 「そ、それより何か用?」 「何って・・・忘れたの?」 呆れ顔のキュルケに、ルイズはようやく今朝交わした約束を思い出した。 「あ!」 「食事、行くんでしょう?タバサとギーシュはもう厨房で待ってるわよ」 「ごっ、ごめん!すぐ着替えるから――」 言いかけたところではっとドアに眼を向けると、ギアッチョは既に 廊下へ姿を消していた。 「私達でシエスタを送って行った時に、今日の昼食を厨房でって話に なったのよ」 扉横の壁に背中を預けるギアッチョを見つけて、キュルケは問われる 前にそう言った。 「ま、そんなところだろうとは思ったがよォォォ~~~~・・・ そりゃ何だ、このオレも一緒に着いてくことになってんのか」 「当ったり前でしょう?あなたが主役なんだから」 「オレぁそんなガラじゃねーんだがな」 若干首をすくめて答えるギアッチョを面白そうに眺めて、キュルケは その隣に背をもたれさせる。 「あなたが来ないとシエスタ泣いちゃうかも知れないわよ?あの子 随分あなたに感謝してるみたいだし・・・惚れられちゃったりしてね」 「こんな化け物に惚れる人間が一体どこにいんだよ」 「あら、いつもの自信がないじゃない あなたって結構イイ男だと 思うわよ?まあ私のタイプとはちょっと違うけどね」 半分茶化して笑うが、ギアッチョは詰まらなそうに首を振る。 「・・・そういう意味じゃあねーよ 得体の知れねえ力で無数の人間を 殺して来た野郎が化け物でなくて何なんだ?・・・全く今更だが、 オレは本来他人と関わっていい人間じゃあ――」 「ストーップ、ギアッチョ一点減点よ」 声と共に突き出されたキュルケの掌に、ギアッチョの言葉は中断された。 「いい?あなたが過去に人の命を奪ってきたこと、それは事実かも 知れないわ だけどね、こう言うと冷たく聞こえるかもしれないけど、 私達はそんなこと知らないの 知ってるのは、いつでも何度でも私達を 救ってくれたヒーローだけなのよ」 「・・・・・・」 「罪を認めることは勿論大切だわ だけど人を殺す一方で、あなたは 私達の命を、人生を救ってくれた・・・その重さも知っていいんじゃ ないかしら?」 キュルケは小さく笑みを浮かべてそう言うと、躊躇いがちに開きかけた ギアッチョの口にスッと人差し指を当てる。 「だからネガティブな発言は一切禁止!次に言ったら三点減点するわよ」 あくまでも茶化した態度のキュルケに小さく溜息をついて、ギアッチョは 諦めたように彼女を見た。 「・・・で、ポイントオーバーでどんな罰ゲームを頂けるんだ」 「そうねぇ・・・十点マイナスで三食はしばみ草ってのはどうかしら?」 「・・・・・・そいつは勘弁願いてぇな」 再度の深い溜息と共に、ギアッチョは両手を上げて降参の意を示した。 「ごめん、お待たせ!」 マントを胸に抱えて、ルイズは急いで部屋から飛び出した。確認する ようにこちらに一瞥を向けて、ギアッチョは「行くぞ」という一言と共に すたすたと歩き出す。 後を追おうとするルイズの頭に、スッとキュルケの片手が置かれた。 「頑張りなさいルイズ きっとチャンスはあるわ・・・多分」 「・・・へ?」 生温かい笑みのキュルケを、ルイズはきょとんと見返した。 「本ッ当に済まなかったッ!!」 厨房へ着いたルイズ達を出迎えたのは、マルトーの猛烈な謝罪だった。 シエスタから仔細を聞いたのだろう、「やりたくてやったことだから」と 首を振るルイズ達にマルトーはまるで懺悔のような表情で謝り続ける。 設えられた質素なテーブルにこっそりと眼を向けると、本を開いて己の 世界に逃避しているタバサの横でギーシュが苦笑交じりに肩をすくめた。 どうやら自分達が到着する前から、この大柄なコック長は大音量の謝罪を 繰り返していたらしい。マルトーに視線を戻すと、謝り続けるうちに 感極まったのか、彼はとうとう漢泣きに泣き出した。 「おっ、俺は誤解していたッ!あんたらみてぇな貴族がいることを 知ろうともせずに、この世の摂理を理解でもしたような気になって いたんだ・・・ッ!!本当に、詫びのしようもねえ!!俺は、お、俺はッ!」 「・・・おいマルトー」 咆哮の如き大声のマルトーを見かねてか、ギアッチョが気だるげに声を かけるが、マルトーはギアッチョに標的を変えて尚も喋り続ける。 「おおギアッチョ・・・お前さんにも一体何て謝りゃあいいのかッ!! モットの野郎が悪魔なら、こんな傷だらけの人間を死地に向かわせた俺は 堕獄の罪人よ!!こんなもので償い切れるとは思わねぇが、どうか気の 済むまで俺を殴ってくれッ!!」 「ああ?」 「「コック長、それは・・・!」」 ギアッチョと外野、双方がそれぞれ声を上げるが、マルトーはそれに 首を振ると漢らしく両手を広げて怒鳴る。 「気にするこたぁねえ!これは俺の罪滅ぼしなんだ!!さあッ! いくらでも殴ってくれ!!さあ!さあッ!早く!!はやげふゥゥウッ!!」 「「殴ったーーーーー!?」」 ギアッチョの躊躇無い一撃を顔面に受けて、マルトーは派手に吹っ飛んだ。 やれやれと言わんばかりに溜息をついて彼を引き起こす。 「眼ェ醒めたかマルトー」 マルトーをしっかりと立たせてから、ギアッチョはそう口を開いた。 「何度も言うがよォォ~~~ オレ達がやると決めたからやったんだ 謝罪なんぞ受ける気もねーし権利もねぇ そんなもんよりオレ達はメシが 食いてーんだがな」 「お、おお・・・ギアッチョ・・・!」 マルトーの顔に、明らかな感動の色が浮かぶ。様子を見守っていた コック達を見回して、マルトーはいつもの威勢を取り戻した声で叫んだ。 「聞いたかお前達!真の英雄は己の行為に代償を求めたりはしねぇ!! 俺達がするべきはとびきりの御馳走を振舞ってやることだ!!さあ お前達、調理を再開しようじゃねぇか!!」 「「おおぉおぉおーーーーーーーーーっ!!」」 ていうか殴れと言われたから殴っただけだろうなと思うルイズ達を よそに、マルトー達は大盛り上がりで料理にとりかかった。 ほどなくして、テーブルに種々の料理が運ばれて来た。肉や野菜、色 とりどりの果実が惜しみなく使われたそれらは、正に御馳走と呼ぶに 相応しい代物であった。ルイズ達にはさほど珍しいものではなかったが、 ギアッチョにとってはそうではないようで、先ほどからルイズの隣で 小さく感嘆の声を上げている。 料理が運び終わるまでの間、キュルケ達としばし談笑していたルイズ だったが、ふと気付いて顔を上げた。と、手馴れた様子で配膳する シエスタと眼が合う。 「もうすぐ全部運び終わりますから、もう少々お待ちくださいね」 シエスタは普段着では無く、いつものメイド服を着ていた。にこりと笑う シエスタと対照的に、ルイズは少し心配げな顔を見せる。 「シエスタ、休んでなくて大丈夫なの?」 その言葉に場の視線がシエスタに集中するが、シエスタは笑みを絶やさず 応じた。 「いえ・・・自分のことなんかよりも、私は一秒でも早く皆さんにお礼を したいんです 私に出来るのは、少々の料理の手伝いぐらいですから・・・」 「それに」シエスタは少し厨房を見渡して言葉を継ぐ。 「またここで働くことが出来るんだって思うと、休んでることなんて 出来なくって」 「シエスタ・・・」 屈託の無い笑顔を見せるシエスタに、ルイズ達はこの娘を助けてよかったと 改めて思う。互いに顔を見合わせて、つられるように笑った。 「・・・おいしい」 口に運んだ料理は違えど、彼女達の感想はみな賞賛の一言だった。 「いつもうめぇが・・・今日はそれ以上だな」 ギアッチョまでが珍しく素直な賛辞を口にする。 「俺にも使える魔法がある」いつかマルトーが言った言葉だが、成る程 こいつは確かにその通りだとギアッチョは柄にも無く独白した。 「そうかい、そいつぁよかった!こんな料理でよけりゃあいつでも食いに 来てくんな!あんたらにならいつでも御馳走を振舞わせてもらうぜ!」 マルトーはガキ大将のような笑顔を見せる。その隣で、シエスタも クスクスと楽しそうに微笑んだ。 「・・・次ははしばみ」 「却下だ」 誰よりも旺盛な健啖ぶりを現在進行形で発揮しているタバサの提案を、 ギアッチョは一瞬で棄却する。 トリステイン魔法学院――その厨房を、わだかまりの無い笑いが満たした。
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キュルケとタバサが急いで降りてくる。勝利を喜びあいたいところだが、今は そんな場合ではない。 「ルイズッ!!足見せなさい!!」 シルフィードから飛び降りるや否や駆け出してきたキュルケがルイズの足を とった。傷口を確認しようとして、思わず悲鳴を上げそうになる。 「――ッ!」 それはそうだ。骨が折れたとか肉がえぐれたとかいうレベルではない。 ルイズの左足首から先は、文字通りちぎれ飛んでいるのである。 よほど痛いのだろう、ルイズはギアッチョにしがみついたまま声も出さず 首を曲げることすらしない。しかし何が彼女を支えているのか、それでも ギリギリで意識は保っているらしい。 タバサがルイズの左足を持ってきた。それを元のように切断面に当て、 ギアッチョに支えるように指示し、タバサはそこからキュルケと共に水の 詠唱を始める。 「・・・治んのか?」 言ってしまってからギアッチョはルイズの前で聞くべきではなかったかと 少し後悔したが、キュルケは少し笑ってそれに答えた。 「大丈夫よ、まだ時間が経ってないからなんとかくっつくはず・・・ もっとも 私達は水のメイジじゃないから、あくまで応急手当しか出来ないけどね はやく学院に戻ってちゃんとした治療を受ける必要があるわ」 なるほどな、と呟いてギアッチョは腰を下ろす。支えてくれと言われても ルイズが未だにしがみついているのでかなり難しい。しかし今彼女が 戦っているであろう言語を絶する痛苦を考えると、少し離れろとか ましてどっちを向けだのどこに座れだの言えるはずがないので、 ギアッチョは仕方なく彼女を半ば抱き込むようにして足を支えた。 そんな自分の姿を見て、ギアッチョは自嘲気味に笑う。 ――このギアッチョがガキを抱えて何やってんだ?暗殺者から保父に転職ってか? しかし軽口を叩きながらも、自分が徐々にここに馴染みつつあることを ギアッチョは薄々自覚し始めていた。 ガサリ、という茂みを掻き分ける音が聞こえ、ギアッチョ達は一斉に振り向いた。 満身創痍でよろめきながら現れたギーシュはルイズを抱きかかえるギアッチョ という有り得ない光景に数秒言葉を失ったが、「遅かったじゃない」という キュルケの言葉に我に返ると、「ただいま」とだけ返事をして彼は糸が切れた かのようにその場に転がった。 ギーシュにこっちで起きたことをあらかた伝え終わる頃には、ルイズの 応急処置も終わっていた。 「動けるか?」 とギアッチョが聞くが、ルイズはふるふると首を横に振る。ギアッチョは やれやれと言うように息を吐き出すと、キュルケとタバサに眼を向けた。 「悪いが・・・オレ達も治療してくれねーか 力が余ってんならだがよォォ」 その言葉に頷いて、キュルケはギーシュの治療に取り掛かった。 「切り傷だらけじゃない」 彼女は驚いてギーシュを見る。そんなキュルケにギーシュは辛そうに笑い ながら答えた。 「正直泣きそうだよ 早いところなんとかしてくれたまえ」 「まだそんな軽口が叩けるなら問題ないわね」 フーケを倒し、ルイズの足もとりあえずの処置が済んだ今、キュルケは ようやく余裕を取り戻してきた。横目でギアッチョを見ると、タバサが治療を 施しているところだった。 本当に、この男は一体何者なんだろう。全身血だらけだというのに辛そうな 顔一つ見せないギアッチョを見ながらキュルケは思う。何が凄いとかどこが おかしいとか、そういう次元の問題ではない。ギアッチョの一挙手一投足、 その全てが常にキュルケの理解を超えていた。殺人に一切の躊躇を持たない こと、戦闘に慣れすぎていること、よく分からないことでキレまくること、そのくせ 普段は冷淡なまでに静かなこと、あと変な服とか変な眼鏡とか変な髪形とか、 そしてそれより何より彼の魔法――魔法としか思えない何か――・・・。 自分の火球を消し去ったと思えばギーシュの魔法を完全に跳ね返し、 あのフーケのゴーレムをも一撃で土に返す。こいつの能力は一体どこまで いけば底が見えるのだろうか。ギアッチョがその力を発揮するたびに、 彼女達は彼への評価を改めざるを得なかった。 ギアッチョはいつも同じ文句を唱えている。「ホワイト・アルバム」・・・発動に 必要な言葉はそれだけらしい。だがルイズがギアッチョを召喚した時、 あの男は一言も呪句を発さずルイズを凍らせていたはずだ。してみると あの言葉は発動の為のキーワードというよりは、己の精神を励起させる為の 合言葉と捉えたほうがいいのだろうか?そこまで考えて、キュルケはあとで 聞いてみるか、と思考に蓋をする。今はそれよりもっと気になっていることがあった。 「踏まれた時」 タバサがキュルケの疑問を代弁する。 「どうやって?」 治療を続けながら、タバサはその蒼い瞳だけをギアッチョに向けた。 要領を得ない質問だったが、ギアッチョはその意味するところを理解した。 だがこいつらにスタンドのことをバラしていいものだろうか。数秒の思案の 後、ギアッチョは当たり障りのないレベルで答えることにした。 「・・・あの木偶の足と地面との間に氷の支柱を作った 完全には間に合わ なかったんで御覧の通り地面にめり込んだ上に小石が刺さって血塗れ だが・・・薄切りハムみてーになっちまう前にギリギリ完成出来たってわけだ」 ギアッチョのタネ明かしに、その場を目撃していないギーシュまでもが眼を 丸くした。 「ギリギリって・・・飛び込んでから足が完全に地面につくまでの一瞬で そこまでやってのけたって言うの!?」 キュルケが思わず口を挟む。ギアッチョはこともなげな顔でキュルケに眼を 遣るが、内心自分でも驚いていた。 ホワイト・アルバム ジェントリー・ウィープス。膨大なスタンドパワーを消費 して、空気をも凍らせる力を引き出すホワイト・アルバム最大最強の能力。 しかしいくらなんでもあの0.5秒にも満たない時間で完全に足を固定し切れる とはギアッチョも思っていなかった。言わば捨て身の賭けだったのである。 そしてそれ以上に驚いたのがゴーレムの凍結粉砕だ。ジェントリー・ ウィープスを発動していることを計算に入れても、あれは速過ぎる氷結速度 だった。ギアッチョはデルフリンガーに眼を落とす。ビクッ、とその刀身が 震えた。相変わらず情けなく怯えているが、こいつを握った瞬間に加速した ことをギアッチョは思い返していた。思えば加速してからゴーレムをブチ砕く まで、自分はずっとこいつを握ったままだった。 ――こいつを抜くと力が強化されるってわけか・・・?身体能力だけでなく ・・・オレのスタンドまでも ギアッチョはじっとデルフリンガーを見つめると、おもむろに声をかけた。 「おいオンボロ」 「はヒィッ!!」 お・・・俺は何回殴られるんだ!?次はどこから襲ってくるんだ!?俺の そばに近寄るなァァーーー!!と叫びたかったデルフだったが、 「てめーがいなきゃあルイズは死んでた・・・助かったぜ」 「え」 ギアッチョの意外すぎる一言に、彼は口――のように見える鍔――を 開いて固まった。てっきりさっきとっさに彼に命令してしまったことを 怒られるのかと覚悟していたのに、ギアッチョの口から出てきたのは 正反対の言葉だったのである。ギアッチョはその妙な髪形の頭を掻いて 続けた。 「それとよォォ~~ その卑屈な口調はもうやめろ いい加減鬱陶しいぜ」 「・・・・・・ダンナ・・・」 敬語は使わなくていい、とギアッチョは言外に言っている。デルフリンガーは この暴君に自分が認められたことに気付き、 「・・・へへっ」 彼の口からは思わず笑みが漏れた。 ギアッチョの胸にかかっていた圧力がすっと無くなる。ルイズを見下ろすと、 彼女はギアッチョに押し付けていた顔を上げ、キュルケ達から見えないように ごしごしとこすっていた。ギアッチョはそこで初めてルイズが泣いていたことに 気付いたが、黙ってルイズが落ち着くのを待つことにする。 「・・・・・・・・・ギアッチョ・・・あの・・・・・・」 しばらくして少し気を取り戻したらしいルイズが、恐る恐るギアッチョを見る。 怒られるのを恐れているのだろうということは理解出来たが、ギアッチョは そんなルイズの心を忖度することなく、氷のような声で問いかけた。 「どうしてあんなことをした?」 その声にルイズの身体が一瞬こわばる。 「・・・それは・・・」 「オレが昨日言ったことを覚えてなかったと そういうわけか? え? おい おめーはこいつらの再三の制止を振り切って地上に残った そうだな そしてそのせいでフーケに逃亡を許しかけ・・・その上てめーの命まで 失うところだった それを踏まえてもう一度聞くぜ」 何故あんなことをした、とギアッチョは繰り返した。 ルイズは顔を俯かせ、しばらく沈黙を続けていたが、やがて絞り出すように 声を出した。 「・・・・・・だって・・・・・・ギアッチョが・・・」 「ああ?」 オレのせいかこのガキ、と怒鳴りかけたギアッチョだが、 「ギアッチョが・・・幻滅する・・・から」 その後に継がれた言葉を聞いて、彼の顔は「はぁ?」という形に固まった。 俯いていた為そんなギアッチョの顔を知らないルイズは、とうとう完全に 見放されたと思い込んだらしい。地面を見つめたまま肩を震わせている。 ギアッチョは心底困惑していた。すると何か?こいつはオレに見直して もらおうとしてこんなバカをやらかしたってわけか? ギアッチョは改めてルイズを見る。俯いていて表情は分からなかったが、 悄然と落としたその小さな肩は彼女の感情を如実に物語っていた。 ――どーしろってんだ 彼女が自分に相当な依存をしていたことに気付き、ギアッチョは心底 困惑した。生前――そして死んでからも――子供から好意を向けられた ことなど一度たりとてないギアッチョである。初めて向けられた、それも 殆どすがりつくような好意に彼が戸惑うのは当然のことだった。 ――こいつの様子がおかしいのはそういうことか・・・ およそプライドの高いルイズらしからぬ行動の理由がようやく解った ギアッチョだったが、 ――だからどーしろってんだ 結局目の前で死にそうに落ち込んでいるルイズに何と声をかければ いいのかは解らないわけで。万策尽きた彼は・・・もっとも策が一つとして 浮かばなかっただけなのだが、とりあえずこういうことに慣れていそうな ギーシュを見た。ボロボロの顔でにやにや笑いながらこっちを見ている。 よし、殺す。次にキュルケに目を向けた。実に楽しそうな眼でこっちを 見ている。てめーも覚えてろ。最後にタバサに眼を向ける。いつも通りの 読めない顔でこっちを見ていた。 ギアッチョはチッ、と大きく舌打ちをした。考えたって解らねーならとにかく いつも通りに喋るしかねーかと開き直る。失敗したらてめーをボコってやる という意思を込めてギーシュを一つ睨んでから、ギアッチョはルイズに向き 直った。 「顔を上げな 聞いてなかったみてーだからよォォー もう一度だけ言って やるぜ」 ルイズがゆっくりと上げた顔を覗き込みながら、ギアッチョは「いいか」と 前置きした。 「てめーに出来ることをしろ 勝ち目もない敵に無為無策で突っ込んで 行くのは『覚悟』でもなんでもねぇ・・・ただの自殺だ」 ギアッチョはルイズの宝石のような瞳を睨みながら続ける。 「ええ? 解るかルイズ 『覚悟』は道を作る意思だ・・・てめーの暴走は違う」 そこまで言って、ギアッチョは返事を求めるように言葉を切った。ルイズは ギアッチョの強いまなざしから逃げたい気持ちをなんとか抑えて、一言 「・・・はい」 と答えた。 ――何でオレはこんなガキに説教してんだ・・・? こういう役目はオレじゃあ ねーだろ ええ?おい ギアッチョは心の中で一人ごちると、小さく嘆息してから今一番彼女に必要な 言葉を口にする。 「・・・いいかルイズ 失敗なんてのはよォォ 誰にでもあるもんだ 重要なのは そこじゃあねー そこから成長出来るかどうかだ ええ? 違うか? てめーの失敗なんてオレは気にしちゃあいねーんだ ま・・・次同じようなことを やらかしゃあ今度はブン殴るがよォォ」 その言葉でルイズの瞳はまず驚愕に見開かれ、次に何かをこらえるように 細くなり――そして最後に、堰が決壊したように涙が溢れ出した。 ギアッチョはそんなルイズを呆れたような安心したような眼で見ると、オレの 仕事は終わりだと言わんばかりに立ち上がった。 ――我侭だったり素直だったりプライドが高いと思えばよく泣いたり・・・ 全くガキってのは解らねーな ギアッチョは新入りに兄貴と呼ばれていた仲間を思い起こし、改めてこんな キャラはオレじゃねえと強く思った。
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アヌビス神⑤ ドォォォォン・・・ 遠くから爆発音が聞こえる。 「おかっぱさん!今の爆発音って!」 「『爆発』音か…?」 今聞こえたのは確かに爆発がおきた時に起きる音。そう、ルイズが失敗して起こる爆発はこういう音を出す。 イルククゥがハッとしてブチャラティに言う。 「つまり、そこにあなたのご主人様がいるってことよね?きゅいきゅい!」 「だがルイズが爆発を起こしたということは、すでにルイズの身に何かが起きていると言うこと。 一刻の猶予も無い!急げ!爆発音のしたほうに走るぞ!」 ブチャラティは走る。ルイズの危機を救うために。 (おかっぱさん…。あの子を心配している。同じ使い魔の私にはよくわかる…。 私もお姉さまにさっきから何度も問いかけているのに返事が無いのね。きっとお姉さまの身にも何かあったのね! 急がないと!お姉さま待ってて!) イルククゥも走る。タバサの身を案じつつ。 待ち合わせ場所へ走る三人の耳にもその音が届く。 方角はちょうど自分の向かっている目的地の方角から。 「これは…爆発音?」 真っ先に気付いたのは金髪の青年、ウェールズ。 ウェールズが真っ先にその音に警戒する。 それに続いてマリコルヌ、ギーシュも爆発に気付く。 だが彼らが抱いていたのは別の想像。 「ギーシュ!今のは『ゼロのルイズ』の爆発じゃあないか!?」 「かもしれない!キュルケの言うとおりブチャラティが来ているとしたら当然ルイズもいるだろう。 使い魔のブチャラティがこの町に来ているとすれば用事は普通に考えるなら『ルイズの買い物のお供』だろうからね! そしてこの爆発音は、彼女も今危険に晒されているということに繋がるッ!」 その時ウェールズが疑問を浮かばせる。 「『ルイズ』?」 「ブチャラティの主人で僕達のクラスメイト、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 ブチャラティを召喚した本人です。」 「ヴァリエール…。ヴァリエール公爵の…。」 ウェールズにはその名前に聞き覚えがあった。 「そうか。いや、急がなくてはな。彼女も助けに行かなくては…。」 ゴロツキメイジチームリーダーとルイズの生き残りを賭けた戦いは佳境に入っていた。 「やった…!ゼロの私がここまでできるなんて…すごい!!」 しかし相手はまだ動くのをやめていなかった。ルイズに負わされた瓦礫のトラップという予想外のダメージで 肉体的にも精神的にもショックを受けているであろう、それでも執念からか動くのをやめなかった。 「ぐ、ううう、ガホッ!がああ!クソッ!なんでこのオレがここまで押されてやがる…!」 荒々しい声をあげ、欠片を引き抜きながら動いているのを見たルイズはまた緊張が走ったのを確認する。 「この…!よくもっ!よくも顔に…ぐうっ!腹に、腕に傷を…!!やせっぽちのチビガキがッ!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・!!!!!!! ルイズもリーダーのその迫力に思わず息を呑む。 「この…鼻持ちならない…温室育ちの…貧弱でやせっぽちの能無しビチグソ野郎の分際で…! よくもこのオレに傷を…傷を!!!」 リーダーがすごい形相で睨んでくる。 「ぜってぇにバラしてやる!!切り刻んで!五体を引き裂いて!生き肝えぐり出して! 血肉を味わうことで!てめえの残酷な死で清算してやるッ!!BIIIIIIIIIIIIITCH!!!!!!」 再び目の前が赤く染まったような錯覚が起きた。ルイズの目の前の男の狂気がむき出しになる。 その形相にルイズの背筋は縮みあがった。 「なにコイツ!?精神的にキテる…!ヤバすぎるッ!!」 ルイズがブチャラティを探しにふたたび走り出す。 「FWOOOOOOOOOOOOOOO!!!」 リーダーが目をギョロつかせてルイズを睨む。 ルイズは右に曲がる。そこには階段があった。この階段を曲がれば表通りには近くなる。 「階段…!チャンスだわ!」 「逃がすかよォ!!」 ルイズが大急ぎで階段をあがるが、リーダーは凄い。一気に4段抜かしである。 当然2段抜かしが限界のルイズではすぐに追いつかれる。 「HYAAAAAAAAAAAHAAAAAAAAA!!!!刻んでやるよォ!!」 だがルイズは不意に後ろを向き、 「『レビテーション』!!」 ドカンッ!! 不意に天井が崩れる。 ルイズの狙いは上ではみ出ていた屋根。それを爆破したのだ。 「アンタが下!私が上よ!!変態野郎!!」 「なんだとォォォォォォ!!!!」 屋根が瓦礫となりリーダーを飲み込む!! ルイズはそれを全く躊躇せずこう言った。 「地形の相性を考えて動くべきだったわね。アンタたちゴロツキは魔法で平民にデカイ顔してたぶん、 メイジ同士の戦いはてんでダメね!」 ルイズは伊達に『ゼロ』呼ばわりされていない。気位が高い彼女だからこそ今までの人生常に努力と背中合わせに 生きてきた。ありとあらゆる魔法の知識やその用途は頭の中にいっぱい詰まっている。 失敗だらけで努力家のルイズならではの戦いだった。 彼女が最後の台詞を言い切る前にルイズは階段を上りきる。 (やった!この階段さえ上ってしまえば表通りはすぐよ!) 「貴様が下だ!チビ女がッ!!」 リーダーが瓦礫を振り切りながらそう言うとルーンを唱えて飛び上がる。 「『フライ』で先回りを!?」 ルイズが壁に杖を向ける。 「『レビテーション』!!」 爆音とともに穴が開く。ルイズはすかさず壁の向こうに逃げた。 「機転の…きくヤロー…だぜ!あんな爆発しか能の無いゴミ女のくせに!生意気なんだよォ!! HEYYYYYHAAAAAAAAAA!!!」 発狂したような声をあげリーダーがそのまま穴へと続く。 だが穴をぬけた先は建物の中。ルイズは逃げたつもりが逆に追い詰められていたのだ。 「しまったっ!!」 「つっかまーえたァ~~。ウヒヒヒヒヒヒヒヒアヘアヘアヘラ!」 杖であるナイフをいとおしそうに舐め、ルイズに切っ先を向ける。 今度こそルイズを殺すために照準を合わせたのだ。 「『エア・カッター』ッ!!」 リーダーがルイズに呪文を唱える。だがルイズはすでに読んでいたと言わんばかりに杖を振るう! 「『レビテーション』ッ!!」 リーダーの攻撃が発射される前に二つ目のカフスを爆破!攻撃をそらす。 だがそれはリーダーの作戦だった。今放たれた風の刃はごくごく小さいものだった。 (あらかじめカフスをぶっ壊しておけばよォ~~。肝心なとどめを妨害されたりしねーよなァ~~!! 壊すのめんどくせーからこっちから爆破させてやったぜ!!) 「しまったッ!!もう攻撃はそらせないッ!!」 「逃げたつもりが建物の中!冷静でいられなかったのはドコのドイツさッ!! このまままず頚動脈を切ってから…おたのしみはそれからかなァ!?」 ナイフを向けてとどめを刺そうとする。だがルイズの目はまだ生き残ろうと言う意思が消えてない。 このメイジを倒すか!ブチャラティと合流するかが生き残るための道!! 何不自由なく暮らしてきたルイズは今!!初めて生き残りを賭けた試練を乗り越えようとしているッ!! 「まずはこの石をッ!!」 ルイズの次の行動。石を『3つ』投げたッ!! 「『レビテーション』!!『レビテーション』!!『レビテーション』!!『レビテーション』!!」 リーダーの懐に投げ込んだ石が爆発を起こすッ!! 「うぐえッ!!クソッまだやるつもりか?お前にはもう助かるすべは無い、 もう諦めて楽になれば…?」 爆発の影響で起きた煙で一瞬視界が遮られる。そしてリーダーは触覚で感じ取った。 ルイズが煙に紛れて逃げていくのを。 「一時しのぎだ…。こんな手を使って何になる…ハッ!!」 リーダーは攻撃を喰らい一瞬もうろうとなった意識が戻った瞬間やっと気付く。 「4回唱えたはずなのに…。喰らった爆撃は3回?残りの一回で何を爆破した!?」 ルイズが向かう先には!4つめのの失敗魔法で爆破された壁の穴ッ!! 「このあたりには何回も来てるのよ…。この方向に真っ直ぐ行けばブルドンネ街の中央部に出るはずッ!! 「コイツッ!攻撃と同時に退路を切り開いてやがったッ!!生き残るための道を…。追い詰められたことで 生き残るための執念が表立って出てきやがったかッ!!」 しかしリーダーの顔からは笑みが消えない。 「だがよォ~~~。俺だってこの辺りを庭のように歩いているんだぜ? いくらお前がこの町を歩きなれてるからって結局ここでの戦いをホームゲームにしてるのはこの俺様だぜ? その道を使えば確かに中央街まで真っ直ぐいけるだろうよ…。途中曲がる道もないからなぁ~。」 ルイズが一瞬振り返ってこっちに向かいながらリーダーがルーンを唱えているのが見えた。 「何?このいやな予感は?私は何か…ミスをしている?」 「その走るスピードなら!こっちの『座標指定』と『呪文詠唱』のほうが圧倒的に速いッ!!『トルネード』ッ!!」 ルイズは遠くから『トルネード』のルーンが聞こえた時に背中がゾクリとする感覚を味わった。 理由は簡単。この逃走経路には大きな欠点があったことに気付いた事で。 目の前にトルネードが立ちふさがったことで自分のミスに気付いたのだ! 「足止めを…しまった!まっすぐ行けば…途中曲がる道がないからこそ! この道を塞がれたらもう私はこの位置から逃げられないッ!!」 ルイズが壁に杖を向ける。 「『レビテーション』!!」 「グッド!!その瞬間を待ってたんだッ!!お前が避けるために壁を爆破するために! 一瞬横を向いて呪文を唱えるときに無意識に行う『減速』の瞬間をッ!!」 リーダーが走りながら唱えていた次の呪文を開放する。 「くらえッ!『エア・カッター』ッ!!」 放たれたのはまたしても小さな刃。だがその一撃は壁を爆破されたと同時に ブチッっと音を立ててルイズの右足に当たるッ!! 「ぐッ!……あああッ!!!足がッ!!」 「よし!今の音は右のアキレス腱が切れたなッ!!これでもうお前はちょろちょろ逃げることは 出来ないッ!!やっと追い詰めたぜッ!!」 リーダーが自分の血で汚れたナイフをルイズに突きつけようとする。 「いいかげん…死んでおきなッ!!」 「それは無理だわ。」 ルイズが右足を抑えていた手を離し近くの石を掴みとって軽く上方向に投げる。 重力に引っ張られ下に落ち、体勢を崩したルイズの胸の高さまで落ちた時。 「今私は…今までで一番生き延びる事に必死だから。」 ルイズが再びコモン・マジックを唱える。そして当然のように石は爆破するッ!! 「な、なにいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」 ドカンッ!!という爆発音と共に爆破の衝撃はリーダー以上にルイズ自身を襲う!! だがその衝撃でルイズは逃走経路を抜けて竜巻を回避する。 「ゴホッ!!な、なんとしてでもあの場所に…!行きさえすれば…!!」 だが。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………。 「キレ…てんのか…この野郎…。自分をふっ飛ばしてまで…俺に殺されるのがイヤか…?」 リーダーが目の前に立ちふさがる。 (くっ…。やっと…。あの竜巻をよけて…やっとここまで生き延びたのに…もう…これ以上動けない…。 せっかく…一生懸命あがき続けたのに…!!) 「聞いてんだよ…。俺に殺されるのがそんなにイヤかッて…てめーに聞いてんだよ…!!」 「当然よッ!!」 ルイズが力を振り絞ってリーダーを威嚇する。 「あんたなんかに殺されるなんて…貴族としての誇りが傷つくわ…! そんな目に会うくらいなら…いっそ自分の力で死んだほうがマシよッ!!」 狂人を前にして彼女はそう言ってのけた。 もう自分の舌を噛む力も残ってないはずのその体で。 周りから馬鹿にされながらもそれでも貫き続けた『誇り』のために。 なにより、今自分を必死で探してるであろう『彼』の行動をその喉が切り裂かれるその瞬間まで 信じているからこそ。 「そいつぁ大層な心意気で。その誇りを粉々に崩せば…さぞかし気持ちがいいだろうなぁ~。」 リーダーがナイフを振りかぶる。 「ヒャハハハハハハハハハハハハハ!!!!!さようならだじゃじゃ馬女!!せいぜい俺を楽しませろよォ!!」 来てくれる…!! リーダーの手が振り下ろされる。 ――――――きっと来てくれる…!!! 手にしたナイフが一直線にルイズの首へと向かう。 ―――――――――――――アイツは…必ず来てくれる!そう…信じさせてくれる…!! ―――――――――――――――たとえそれがどんなに信じられなくてもそれをやってのけるのが『アイツ』だから!! ルイズの喉に切っ先が。 切っ先がルイズの喉の皮膚を破る。 このまま声帯や呼吸器が切り裂かれる…リーダーはそう信じて疑わなかったが。 「ウリアアアアアアアアアアア!!!」 切っ先が皮膚を切った瞬間、それとほぼ同じタイミングでリーダーのわき腹に一撃が叩き込まれた。 ルイズの目が見開かれる。 見間違えるはずが無いその人物が目の前にいた。 彼女の奮闘はその男がかけつけるまでのコンマ一秒間に間に合ったのだ。 その男の到着はルイズに安堵を起こした。 相手が自分に与えた恐怖は暖かな環境で育った自分には計り知れない物だったのに。 不可能を可能に変えて見せた男が! 優しさと厳しさを合わせ持つ男は駆けつけてくれたからッ!! 「…間に合ったな。」 「ああ、相棒。マジに危なかったようだがセーフみたいだぜ。」 彼が自分を案ずる声が聞こえた。 優しく、暖かい物が心の中に広がった気がした。 「その傷…ずっと戦っていたのか。驚いたな。そしてゾッとしたよ。もしもう少し遅かったら…。 いや、そもそも戦ってくれなかったら…。結局間に合わなかっただろう。 …がんばったなルイズ。本当に…よくやってくれた。」 弱弱しく笑うルイズに彼は微笑み返す。 「あとはオレにまかせてくれ。」 「遅いわよ…。主のピンチにはもっと早くかけつけなさいよね…。ブチャラティ。」 「きゅい!やった!間に合ったのね!!」 イルククゥが後ろから追いつく。 「イルククゥ。ルイズを頼んだぜ。コイツはオレがやる。」 「わかったわ!さあ、お嬢さん!一緒に行きましょう!!きゅい!」 「へ?ブチャラティ!?誰なのこの女!!わっ!ちょっと!急に背負わないでよ!」 ブチャラティが起き上がるリーダーに向き合う。 「コイツがベックの親玉か。ルイズの爆発を立て続けに喰らっている割りに立ち上がるとは ずいぶん頑丈なようだな。」 「クソッ!こんな時に来るなんて!だが従者が一人増えて何だってんだ!何をそいつに期待してるかしらねーが そいつからは魔力を全く感じない!ただのメイジ殺しだ!そんなのが来たところで何ができ…?」 リーダーがわき腹に違和感を感じる。わき腹にはジッパーが貼られていた。 わき腹に喰らった一撃がそのままジッパーを発現させたのだ。 「な、なんだコレは!?なんでこんなコトができる!?」 ブチャラティが少しだけ出ていたデルフを完全に抜き、全く躊躇した様子を見せず みねではなく刃のほうで切りかかる。 「フンッ!俺に斬り合いで挑む気か!?」 リーダーがナイフで受けるがブチャラティはそのまま踏み込む。 全身の力をデルフにこめて『体当たり』の要領でリーダーをレンガの壁に弾き飛ばしたッ!! 「おおおおおおおおおおおおおあああああああああああああッ!!!!!!!」 「こ、コイツ…!なんてパワーを…ガアッ!!アアアアアアアアアアアアアア!!!!!」 ルイズは今この瞬間自分は『とてもツイていた』と思った。 本当に危ないところでブチャラティが間に合ったことを心から本当にツイていたと考えた。 なぜこの局面で自分にツキが回ってきたのか自分でも不思議に思ったほどに。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ その幸運はルイズだけのものではなかったからだろうか。 「あ…その壁…!その壁の向こう側にッ!!まさかッ!!きゅい!!」 最初にその何かに気がついたのはイルククゥ。 だがその事に気付いた時にはブチャラティは壁に押し付けたリーダーにさらに大きな一撃を叩き込む。 その衝撃で後ろの壁がぶっ壊れるほどの一撃を。 「いや、その身一つでよくここまで戦い抜いたよ。これほどの健闘、オレは永久にお前を『憶えて』おこう。」 アヌビスの美しく輝く刀身をタバサの細腕でキュルケに向けて振りかぶる。 「タバサ…!!」 だが振りかぶった刀が振るわれる事はなく、 オオオオオオオオン!!!!! 「ぐあああああああああああッ!!!!!!」 「な、なんだぁ!?コイツら…うぐぇッ!!」 ブチャラティが 弾いたリーダーの体がタバサに乗り移ったアヌビスを弾き飛ばす。 「ブチャラティ!?」 キュルケが突然の来訪者に目を見開く。 ブチャラティ、ルイズの両名がそこにいる意外な人物に驚いた。 「おまえ…キュルケか?何をしている?」 「間違いない…キュルケだわ。何でここに「お姉さまッ!!」」 言いかけたルイズの台詞を遮ったのはイルククゥだ。 「やめて!おかっぱさん!!お姉さまが下敷きになってるわ!!このままだとお姉さままで巻き込んじゃう!!」 「お姉…さま?」 最後の一撃でとうとうのびていたリーダーが下敷きにしていたのはキュルケの親友の『タバサ』だ。 「タバサも?ていうかあれ!?アンタお姉さまってタバサが!?」 「あっ。」 イルククゥが口を押さえた。今一瞬明らかにブチャラティがこっちを見て疑いの目を向けてきた。 「なんだオマエらはッ!!あれ?てめーらさっきあの店でデル公を買っていった奴じゃあねえか?」 タバサが起き上がった。まずブチャラティが驚いたのはその小柄な体で大の大人一人ぶつけられてピンピンしていた と言う点。もう一つはブチャラティの記憶の中のタバサはたしかこんな言葉使いをする子ではなかったという点だ。 「タバサ…?」 「ブチャラティ!!気をつけてッ!!」 傷を抑えてキュルケが起き上がっていた。必死な表情でブチャラティに説明する。 「ブチャラティ!これはスタンド攻撃よッ!!タバサはその刀で操られているッ!!」 「何ッ!?」 すぐにタバサに向き直る。アヌビスがタバサの口でそのまま喋り始める。 「そうか。お前やっぱ『スタンド使い』だな?『タバサ』の記憶では『ブチャラティ』と言う名前らしいが。 …うん?タバサの記憶にはコイツのデータがねーのか?ツイてねーな。」 それを聞いたキュルケが思い出す。なぜタバサが知らなかったのか。 「そうよ!タバサはあの決闘に来ていなかったッ!!あの子にはブチャラティがすごいことやってギーシュを 倒したとしか言ってなかったからッ!!」 しかしそれを我関せずといった感じでブチャラティがアヌビスを睨む。 その殺気に一瞬アヌビスが押されるほどだ。 やがてブチャラティが口を開く。 「…いますぐに、タバサを離してもらえるか?」 「それは無理だな。戦いはまだ続いているんだぜッ!!」 ブチャラティとアヌビスが互いに飛ぶ。 「ブチャラティ!!『アヌビス神』の刃に気をつけて!!そいつはすり抜けて任意の対象だけを斬る能力を 持っているわッ!!そしてそいつは一度受けた攻撃は完全に憶えて二度と通用しなくなる!」 ブチャラティがデルフを叩き込む。アヌビスは冷静にそれを受けとめる。 「相棒!ガードはするなッ!!すり抜けると言うことはアヌ公の刃はガードできねぇッ!!何が何でも攻め続けろ!!」 デルフがそう言うや否やブチャラティが連打する。 「ハッ!どうした!?『スタンド』を使わなくていいのか?このまま続けたところでどんどんお前の動きを 憶えていくだけだぜ!?」 ルイズがイルククゥの背中でギリと歯噛みする。 (どんどん成長するスタンド…。無駄な攻撃をしたら奴に覚えられてしまう…。 ブチャラティはおそらくギリギリまでスタンドを使わない…。おそらくタバサを 傷つけることをためらっているから…。) 「ダメ!お姉さま!やめて!おかっぱさんを傷つけないでッ!!」 イルククゥが動揺してタバサに声を投げかけるがそれは届かない。 その一方、ブチャラティが考えているのは当然タバサを助ける方法。 そのためにアヌビス神を分析することに集中していた。 「キュルケッ!!近くに本体らしい奴は見てないか?」 「ダメよ!町中探したけどそんな感じの奴はどこにもいないッ!!」 (だがこいつの動きは近距離パワー型の物だ。自動追跡型や遠隔操作型にしてはあまりにも動きが複雑すぎる。 まるでタバサ自身が本体のような…。) ブチャラティはそこまで考えて意見を出す。 (まさか…。いやそうとしか考えられない。) ブチャラティが一歩離れてアヌビスに言う。 「わかったぜおまえの正体。なるほどな、これではキュルケもわからないわけだ…。 いきなりこういう変則的なスタンドに出会ってしまってはな。」 「え?」 「キュルケ。こいつの本体は探しても無駄だ。こいつに本体はない。こいつは本体が死んでもなお残り続ける 『一人歩き』型のスタンドだッ!!」 「正解だ。こうも簡単に答えにたどりつくとは驚きだぜ。だがわかってどうする? 結局コイツを開放するにはコイツを傷つけるほかないと言うのに。」 「ブチャラティ…!!」 キュルケが怪我を押して立ち上がろうとする。 だがブチャラティはキュルケを止めた。 「動くな、キュルケ。タバサは必ず助ける。」 そういうブチャラティの目に迷いはない。 デルフを上段に構えてアヌビスに振り落とす。 「向かってくるかッ!とうとうコイツを傷つけてまで戦う決心がついたか!」 「いいや!そんな必要はない!」 振り落とされたデルフの刃をアヌビスの刃が受け止めた。その瞬間をブチャラティは見逃さなかった。 「今だッ!!『スティッキィ・フィンガース』ッ!!」 S・フィンガースの拳はタバサの両手首に当たる。タバサのしなやかな両手にジッパーが発現する。 そのジッパーが開いてタバサはアヌビスを『自らの手ごと』落とした。 「何ッ!?こ、この能力は!?しまった!!」 「ウリァッ!!」 ブチャラティはそのまま床に落ちたアヌビス神のみねを思いっきり蹴り飛ばす。 手からアヌビス神が離れて洗脳が解けたタバサはそのままガクンと力尽きる。 「お姉さまッ!!」 イルククゥがタバサを即座に抱えた。ルイズが背中からタバサの様子を見る。 「大丈夫。気を失ってるだけよ。手当てすれば直るわ。」 キュルケがタバサの無事を確認してブチャラティに言う。 「いったいどうして…?」 「一人歩きするスタンドと言うことはタバサを操っているのはあの刀そのものということになる。 だからあの刀を手から離してしまえば洗脳は解けるだろう。だからジッパーでタバサの手ごと落とせば ほとんど傷つける必要も無くタバサを助けられると言うことだ。」 つまるところブチャラティは自分が苦労したタバサの開放を簡単にやってのけてしまったのだ。 素早く、それでいて華麗で全く無駄なく。 そんなブチャラティを見て彼女は、キュルケは思った。 『なんてカッコいいのかしら…!』と。 「ああ~。ブチャラティ。ねえ、私からひとつお願いがあるんだけど…。私、あなたのことを『ダーリン』と呼ばせて もらってもいいかしら?」 「無理。」 「もーう、ダーリンのけちんぼー。」 「断っても結局言うのか…。」 「ちょっと!キュルケ!何勝手なこと言ってんの!?」 ブチャラティがふと思い出し、蹴り飛ばしたアヌビス神を見る。 「そうだ…。キュルケ、コイツを封じる方法はないのか?今回はなんとか引き離すことに成功したが、 このまままた誰かに持たせたらやっかいだぞ。」 ブチャラティの言葉にキュルケがハッとした。 しかしその時あることを思い出す。 「でも待って。考えても見ればアヌビスを最初に持ったのは私だけど、なんで私は操られなかったのかしら? タバサと取り合いになったときもいきなりタバサが洗脳されたわけではなかったみたいだけど…。」 「その辺りに何か奴を完全に封じるヒントがあるんじゃあないか?もう少し思い出せないか?」 キュルケがうーん、うーん、と唸っているうちにルイズが何かに気付いた。 「そういえば…この刀さっき武器屋に寄って見たときは抜き身になってなかったと思うけど、 コレの鞘はどうしたの?」 「それだわ!!」 キュルケが思い出したように大声を出し、ルイズが驚いてイルククゥの背中からずり落ちる。 「イタッ!ちょっと!どうしたのよ急に!!」 「鞘よ!!タバサが操られたのは私達が揉め合った時に鞘が抜けてからだったわ!!もしかしたら あの鞘があれば完全に動きを封じることができるかも!!」 心配そうな顔で背中に引き上げるイルククゥの背にルイズが戻る。 その時、肝心なことを忘れてたように指摘した。 「で、鞘は?」 「ああ、武器屋に忘れてきたわ…。でもそんなに遠くは無いから今から取りにいけば…。」 そう言いかけたキュルケの顔が青ざめる。 指差す先にいたのは…。 「ゲホッ!…ヒヒヒ…ヒャハハハハハハ…!!」 真っ赤に充血した眼球、爆発でボサボサになった髪。 表情だけでその男の狂気は伝わってきた。 リーダーが意識を取り戻していた。 「コイツ…!あれだけの攻撃をくらってまだ…?」 リーダーが這いつくばって喋る。 「よくも…!てめえら…ここまでコケにしやがって…!!ヒヒハハハハ…! 全員皆殺しにしてやる…!!五体をバラバラに引き裂いてやる…! なあ、わかってんだろォ?『妖刀』さんよォ!?」 リーダーが手にしようとしているのは…アヌビス神!! 「まずいッ!!相棒!!コイツアヌ公を使うつもりだぜッ!!」 「ヒャハハハ…!いい判断だぜ妖刀…!!一瞬でオレの殺人衝動と殺しの技術に気付くとは…! だからさっき操っていた女の『治癒』でやられる前にオレを治したんだろ!? 気が利くぜェ!ここまですばらしい得物は始めて見た!!」 ブチャラティが止めるまもなくリーダーがアヌビスを手に取ったッ!! 「アッハッハッハッハッハッハッハ!!!!これでてめえら皆殺しだッ!! 桃色のチビも…!おかっぱ頭も…!みんな、みんなブッ殺してやる!! 妖刀!!テメエにオレの体を貸してやるッ!!どうかこのムカつく野郎どもを 殺させてくれェ!!!ハハハハハハハハハハ!!!ヒャハハハハハハハハハハハ!!!!!!…!」 瞬間、リーダーが完全に沈黙した。そして口がまた開かれる…。 「なんてサイコ野郎だよ…。コイツらを殺るために自分の体すら投げ打つとはな! そして!なんてすばらしい!『タバサ』の体も動きやすかったがここまで刃物で斬ることに特化していて、 なおかつ魅力的なくらい頑丈なボディ!!これほどオレに向いたボディも珍しいッ!!」 ブチャラティの顔に汗が浮かぶ。 「なんて事だ…!復活しやがった!!」 「もはや運命じみた物すら感じる…!!なんだよコイツの記憶…!! 本名”鮮血”の『キャラバン・サライ』だと!?信じられねえ!! コイツ!500年以上前に妖刀になった時に捨てた俺の名を持ってやがるとは!!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!! ブチャラティは胃の中に入れられた鉛を押し込むように唾をのみ、口を開く。 「キュルケ!!タバサを連れて今すぐ安全な場所に避難しろ!!」 「そんな!!一人は無茶よ!!私も!!」 「そいつはやめときな。オレの能力はオレ自身がおまえの情報を覚えているんだ。 一度闘った相手はたとえ持ち主が変わったとしても絶対に、 絶対に絶対に絶っ… ~~~対に負けなああああああああああああィィィ!!」 ブチャラティが再び構える。 「『スティッキィ・フィンガース』ッ!!」 「ちなみに断っておくがッ!!さっきの開放はもう通用しないぜ!!その手はもう覚えたからな…。 スタンド+魔法の妙技、味わってもらおう!!」 「そうか。こちらは片付ける相手がひとまとまりになって大助かりだがな…。」 「いくぜッ!!このキャラバン・サライ容赦せんッ!!」 対峙するブチャラティとアヌビス。 戦いは激化する。 いよいよ昼間の町の恐怖に終止符は打たれる。 リタイヤ 『雪風』のタバサ 再起不能 To Be Contined →
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貴族派の総攻撃が間近に迫る中、ルイズはキュルケ、タバサと共に城門の前に居た 「ルイズ、もう王女の手紙は受け取ったんでしょう これ以上ここに居る意味は無いんじゃあないの、このままだと巻き込まれるわよ」 キュルケが幾分心配そうにルイズに尋ねる、どうやら先程のワルドの事を気にしている様だ 「ええ、姫殿下の命は手紙を回収する事、すでに手紙を手にした以上、一刻も早くトリステインに帰還する事こそ今すべき事よね」 「だったら何故」 「昨夜陛下にお願いしたのよどうか殿下をお残し下さる様にってね、だからそれまでは此処を守ろうって決めたの それにどうせ叛徒共はトリステインにも牙を剥くわ、今戦うか後で戦うかの違いでしかないんだから」 ディアボロを召喚しながらルイズが答える 「それよりも貴方達はどういう心算なの?トリステインに関わりがある訳でも無し、 ついて来ただけなんだからここまで付き合う義理も無いでしょ」 キュルケは照れ隠しか若干視線を逸らせながら答えた 「知り合いを死地に残して自分だけ帰るのも寝覚めが悪いでしょう、それにまだまだ貴方の事をからかい足りないしね」 「…ありがとう、キュルケ、タバサ」 ルイズは口が減らないライバルに呆れつつこれは友情という物なのかしらと思いながら心からの笑みを浮かべた 「でも私は死ぬ心算は無いわよ、だってディアボロが居るもの、知ってるでしょ、 何かあったらすぐ死ぬ奴だけどあいつが死ぬまでは皆絶対に無事だって事」 召喚されたディアボロにルイズは告げる 「ディアボロ、これから始まる叛乱軍の総攻撃を防ぎなさい」 「正気か?さっさと逃げ出した方が身の為だぞ」 「私は此処から下がる心算は無いわ、貴方が死ぬまでに1人の叛徒を倒せば5万回の召喚を 100人の叛徒を倒せば500回の召喚を、1万人の叛徒を倒せば5回の召喚を此処でするだけよ」 「死ぬぞ」 「なら倒しなさい、一人残らず私に届く前に、そうすれば私は死なないわ」 やり取りの後、ディアボロは叛乱軍の元へと歩いていく (忌々しい、本当に忌々しい小娘だ、自身の命を的にしてまで無駄な事の為にこのディアボロを動かそうとは) 叛乱軍の兵士達は一人近寄ってくる男に訝しげな視線を向けるだけで手を出そうとしない、どう判断すべきか迷っているようだ 兵士の顔が分かる距離にまで近寄った時、ディアボロはスタンドを呼び出し5万人の叛乱軍に襲い掛かった このディアボロは…… いわゆる最弱のレッテルをはられている… 歯向かう奴に制裁を加えようとすれば、理不尽な理由でいつも負ける 女にキスされてショック死したこともある ルイズの失敗魔法で吹っ飛ばされるなんてのはしょっちゅうよ だがこんな俺にも勝てる「格下」は居る!! 「格下」とは名前どころか顔すら出ない様なモブキャラのことだ!! ましてや5万人で一纏めッ! お前達はそれだ! お前達には「スタンド」は見えないし触れない… だから俺が勝つ! ディアボロが叛乱軍相手に暴れ回っていると城門が開き騎馬の一隊が姿を現した その中で一際立派な騎馬がルイズの前にやってきた 「陛下!」 「ヴァリエールの娘よ、礼を言うぞ、余は最後に過ちを犯す所であった 我等は義務を果たし名誉を守らんとすべく決戦を挑もうとしていた だが全てを道ずれにしては無責任の謗りは免れ得まい、責任は老骨が負うのが正しいというものよ」 「では」 「うむ、城の奥に1艘の小船が隠してある、それでウェールズをトリステインに降ろして貰いたい それまでの時間は我等が支えよう、過去の栄光ではなく未来への希望の為に」 「承りました陛下、…どうかご武運を」 ルイズ達が城内に戻っていくのを見届けた後、アルビオン国王ジェームズ一世は大音声にて号令を掛けた 「総員全力を持ってアルビオンに弓なす叛徒共を撃滅せよ」 300対5万の戦いは何も出来ぬまま揉み潰されて終わるはずだった しかし、いくつかの理由により王党派は絶対的少数でありながら貴族派を一時壊乱状態にまで追い込んだ 一つは暴れ回るディアボロの存在 一つは士気、死を覚悟した王党派に対し、勝ちが見えている貴族派の士気は高いとは言えなかった 一つは兵の構成、殆どがメイジで構成された王党派に対し、 貴族の私兵、傭兵、徴兵された農民など大多数が平民で構成された貴族派は集中された魔法の威力に対抗出来なかった けれども、多勢に無勢か降り注ぐ矢に王党派は一人また一人と数を減らし残るは王とその供回りだけとなった 周りを隙間無く囲まれた状態でジェームズ一世は叛乱軍に向かって吼えた 「ブリミルの血筋を受け継ぐ古きアルビオン王家は今日滅ぶ だが只では滅びぬ、いずれ己等を滅ぼすであろう王家の力を存分に見るがよい」 「風の流法!」 「闘技!神砂嵐!!」 左腕を関節ごと右回転! 右腕を肘の関節ごと左回転! その二つの拳の間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間はまさに歯車的砂嵐の小宇宙!! ジェームズ一世生涯最後の技は人を、馬を、ディアボロを、大地を、ありとあらゆる物を空中へと巻き上げた その威力はジェームズ一世の肉体も例外とせず、全てが収まった時周囲には何も残ってはいなかった ■今回のボスの死因 神砂嵐の巻き添えを食らって死亡
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漫画版『舞乙HiME』のマシロ・ブラン・ド・ヴィントブルーム 召喚 真白なる使い魔01 真白なる使い魔02 真白なる使い魔03 真白なる使い魔04 真白なる使い魔05 真白なる使い魔06
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「轟轟戦隊ボウケンジャー」の明石暁 不滅の使い魔-1 不滅の使い魔-2 不滅の使い魔-3